入れ歯の痛み

今回は入れ歯の痛みについてお話しようと思います。

入れ歯ってどうしてこんなに痛いの、

と、お嘆きになってはいませんでしょうか?

総入れ歯の噛む力は、全て天然歯のときの噛む力の20~30%しかないと言われています。
したがって、すべて天然歯の時と同じ力で噛んだら間違いなく口の中は激痛に襲われるでしょう。

しかし、入れ歯で全然痛みを感ぜず、なんでも食べることができるよ という方もいらっしゃいます。

どういうことなのでしょう?

実はこれは、すべて天然歯の時の20~30%の力では痛くなく、その範囲なら何でも食べることができるよ、ということなんです。

入れ歯の一部分に痛みが出ると痛くて食べることはできません。
しかし、入れ歯全体に均等に痛みがあれば、人は反射的にそれ以上強く噛もうとしませんから、痛くないと感じるのです。

これを “咀嚼反射の成立”と専門的に言います。

(入れ歯全体の噛む力を上げるのが、夢の入れ歯コンフォートで、これについては別の回でお話しようと思います。)

今回は、なぜ、部分的な痛みが出るのかについてお話します。
部分的な痛みは大きく分けて2種類の原因が考えられます。

1つは、歯茎の下に骨鋭縁と呼ばれる骨の尖った部分があると、その上に入れ歯がのりますから、骨と硬い入れ歯の間に歯茎が、サンドイッチ状態になり強い痛みが出ます。

対処法は入れ歯内面を削って、そこが当たらないようにするか、骨鋭縁が大きければ骨鋭縁事態を歯茎を開いて丸く削るという処置もあります。

2つめは入れ歯が動くことにより一か所にだけ強く当たると、そこが傷になり痛みとなります。

しかし、部分入れ歯も総入れ歯も基本的には僅かに動きながら咀嚼します。それが次のような理由で理想とは違った動きをして歯茎に接触しますと痛みの当たりになります。

入れ歯に横揺れを起こさせる噛み合わせ:
入れ歯の噛み合わせにも色々な理論があります。私が行っている噛み合せ理論は、
入れ歯に不合理な横揺れを起こさせる咬合接触を、一切排除するというものです。
専門的にはリンガライズドオクルージョンというものです。

歯茎との密着度が悪い
全体的な密着度が悪ければいくら噛み合わせが良くてもがたついて動き過ぎます。
それで普通なら当たらなくても良いところに当たってしまい傷を作ります。

入れ歯が大き過ぎる。
入れ歯にはその方に合った適正サイズというものがあります。当たり前ですが、大きすぎてもダメ、小さすぎてもダメ。ところがそのサイズを見つけるのは、入れ歯を専門としている歯科医師でない先生にとっては意外と難しいようです。
大きすぎれば筋肉に押し出されたりして動きは大きくなって当たりが出てしまったり大きすぎる部分が直接当たって傷になったりします。

4、入れ歯がたわむ
  入れ歯の設計に無理があったり、強度不足により入れ歯がたわむことがあります。
  噛むとたわむので、その分歯茎に当たり、痛みになります。

結局は、これらはアンバランスな局所的な痛みなのです。

妙な話のように聞こえますが前にもお話したように、一か所、二か所痛いので、入れ歯として痛くて噛めないということになるのです。
反対に、全体が均一に痛ければ、これは痛くないということにつながります。
全体に均等に圧が加われば痛くなく噛めるということです。

入れ歯が当たって痛いので、歯科医院で調整をするということはこの一ヵ所、二ヵ所の強い当たりを削ってバランスよく当たるようにするということなのです。

しかし痛くなく噛めるようになったと言っても、咀嚼能力は元の天然歯の20~30%なのです。

どうしてでしょう?
  
もう一歩踏み込んでおはなししますと、先程、部分的に痛みがあると痛くてその入れ歯は噛めないということになり、部分的に痛くなければ痛くなく噛めるとお話しましたが、 それでも、天然歯の20~30%以上の力で噛めば痛いのです。

均一な痛みは、全体的にぼんやりとした痛みなのでヒトは、“ああこれ以上強く噛んではいけないということだなぁ” という信号が脳から届き、噛むのをやめるのです。

当然です。入れ歯を入れているときの状態を考えてみてください。
一番下に骨、
その上に歯茎、
その上に硬い入れ歯
の単純には三層構造です。

そこに上から50㎏以上の力が加われば、サンドイッチ状態になっている歯ぐきは、何も鋭縁な部分がなくても痛いに決まっています。
入れ歯で咀嚼する構造上当然です。

だからそこそこで無意識に噛むのを止めるので痛くないように感じるのです。

しかし現実は、天然歯の20~30%の噛む力しか出ておらず、食物の破砕状態も天然歯のそれとは比べ物にはなりません。
だから入れ歯を着けていらっしゃる方は、入れ歯だからあまり硬いものは食べられないよ、とおっしゃる方が多いのです。従来の入れ歯の限界なのです。

こんな例えを私はよくします。硬い椅子に座るとします。

私の実体験ですが、

10㎏ダイエットして硬い椅子に座るとお尻が痛くて座っていられないのです。
座り続けるには柔らかいクッションが欲しくなり、実際使うと快適に座り続けることが出来ます。

入れ歯も同じだと思います。

硬い椅子は顎の骨、
痛いお尻の肉は歯茎、
そして入れ歯はヒトのお尻の骨です。

硬いものの間に入った柔らかいものが痛むのです。

お尻の痛みは太ればクッションは要らなくなりますが、歯茎は厚くはなりません。

結論です、
椅子の座面が柔らかければ座っても痛くないのです。

そうです、
入れ歯の内面が柔らかければ強い力で噛んでも痛くないのです。

入れ歯の内面に柔らかい生体用シリコーンを加工した、夢の入れ歯が出来ました。

次回ご紹介いたします。

お役に立てれば幸いです。
 
  
入れ歯の痛みにお悩みなら、佐野入れ歯専門外来へご来院ください。
毎日、東京都など首都圏からも多くの患者様にご来院いただいております。

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