総入れ歯にならない歯周病予防

今回は歯周病と入れ歯についてお話しようと思います。
歯周病という病気をご存知ですか?

テレビなどでは、歯磨き粉の宣伝にこの言葉はよくでてきますが、なんとなく理解されているのではないでしょうか?

歯周病、字のごとく歯の周りの病気です。
歯の周りには何があるでしょうか?
そうです、歯の周りには歯茎があります。

多分、あなたは歯周病とは歯茎の病気なんだろう、とお思いだと思います。
当たっています、1/4は。
殆どの方は、そう答えます。

もう3つあります。
歯を支える骨と、
歯と骨をつなぐ靭帯です。
歯の根の表面素材のセメント質

先程の歯茎をいれて、この4つに歯周病菌が感染して炎症を起こす病気が歯周病です。
かぜと一緒です。

しかし、かぜと違って、たちが悪いのは一過性ではなくて、慢性疾患だということです。
炎症が長く続くうちに、からだの防御反応も進み歯周組織はボロボロになっていきます。
まるで戦場となった土地が荒れ果てるのと一緒です。

怖いのは炎症を起こして腫れるだけではないのです。
ではその症状をお話しましょう。
初期:歯肉炎
歯周組織のうちの歯茎に限定して炎症がある場合です。
赤く歯茎が腫れて出血することもあります。

軽度歯周炎~重度歯周炎
その度合いにより、
赤く腫れる、出血する、痛い、痛くて噛めないまで段階的に症状が進んできます。
一番怖いのは、歯を支えている骨が炎症により壊れて無くなっていくことです。

歯を支えている骨が無くなっていくということは、砂場で砂の山を作って棒を差し、砂を取っていく遊びで、やがて棒が倒れるように、歯が抜けてしまうということなのです。

一度無くなった骨は例外を除いて再生することはありません。
ここが、歯周病の 一番怖いところなのです。

あなたは、“ 歯茎の腫れ ”にしか気を留めなかったと思いますが(ほとんどの方がそうですが)ここを、忘れないでいただきたいのです。
    

歯は抜ければ終わりです。入れ歯やインプラントのお世話にならなければいけいのです。

誰もがそうなりたくないと思っています。
しかし統計によると、35歳で80%以上の人が歯周病になっています。
35歳になって急に歯周病になるわけではありません。
子供のころからの蓄積なのです。

そこには、人の防御反応、免疫機能に大きく関係しています。
人は30代後半から40代前半に免疫力のピークを迎えます。

歯の磨き方は若いころから変わるものではありません。
免疫力が落ちてきたからといって、倍、一生懸命磨こうと思う人はいません。

ということは、菌数はほぼ同じですが、菌たちと闘ってきた免疫の兵士たちの数が、免疫力のピークを過ぎて減っていけばどうなるでしょう?

敵の菌数は同じ、こちらの兵士の数は減ってきた、となれば当然、敵が優勢になりこちらは負け始めます。
これが一般の人々が歳と共に歯周病が進行する理由です。

 もう一つ、どうしても知っておいて頂きたいことがあります。
それは、歯周病は感染症と言いましたが、菌の感染だけでは悪化はしないのです。

そこに ” 力 ″が加わらないと進行しません。

私は、日々の診療で患者さんにこんな“例え話”でご説明しています。

一本の細い木を頭に思い浮かべてください。
その木を毎日毎日、不自然に揺さぶっていたらどうでしょう?
木の根元の土と木の根の間には、少し隙間が出来てくることは容易に想像がつきます。

その隙間にちょっとした毒を毎日流すと木はどうなるでしょうか?
やがて隙間は広がり、毒は少しずつ効いてきて木は枯れてしまうでしょう。

木は歯です、揺さぶっているのは力、つまり悪い噛み合わせ、毒は歯周病菌が出す毒素です。

一生懸命に磨いていても歯周病が進行する方は、噛み合わせのチェックをして頂きたいのです。

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歯周病菌と悪い噛み合わせ、

この両者が合わさると、歯周病はあっという間に猛威をふるうようになりますので忘れないでください。

歯茎から血が出る、と来院される方が一般的ですが、腫れて始めて重い腰をあげられる方も多いです。
このような症状があるときはかなり悪化した状態なのです。

ついつい放っておいて悪化し、歯を抜かなければいけなくなると、多くの障害が出てきます。
歯が抜けてしまったところに歯を作るのは、
入れ歯か
インプラント(一部ブリッジ)
しかありません。

歯は貴重な財産です。

50歳代で “自分の歯がほとんど無い”ということにならないよう日頃から歯周病の予防を、是非心掛けてください。

御参考になれば幸いです。

栃木にある歯科・入れ歯専門医院長のコラム
Dent.
入れ歯クリニック 飯田和雄

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