長い間、歯がない状態で過ごされていた方にとって、「今更仮歯は必要ありません」と言われることがあります。そう思われるのも無理がありません。
仮歯には見た目を整えるほかにもう一つ大きな役割があります
仮歯は本入れ歯が入るまでの間見栄えを整えておくという役割がありますが、それよりも大切な役割があります。仮歯は別名治療用入れ歯という呼び方があり、歯を失ってしまった口腔内の機能を回復させるリハビリテーション的な役割があり、それをもって入れ歯の前に治療用という名前が付きます。
先ずは結論から
入れ歯の審美・食べる・発音に関して高いレベルで回復を希望される方には仮歯は大きなメリットがあり、必要不可欠と言っても過言ではありません。是非、仮歯=治療用入れ歯の重要性をご理解ください。
入れ歯を義足に置き換えて考えて頂くと、入れ歯の本質が見えてきます!
ご自身の口腔内の機能が低下していることを、知ってください。例えば、脚を失ってしまった方と歯を失ってしまった方は似ています。
脚を失ってしまった方は歩くことができません。歯を失ってしまった方は咀嚼して食べることができません。歯を失ってしまうことは脚を失ってしまうことに匹敵するぐらいの不利があるのです。
義足と入れ歯の置かれている環境は似ています、置き換えて考えるとわかりやすいです
①関節が硬く動きが悪くなっています。(拘縮)
顎関節は股関節同じと思っていただけると分かりやすいです。
②筋肉が痩せてしまっています。(萎縮)
咀嚼筋(食べるためのお口の中の筋肉)脚の筋肉と同様です。
③脚を失ってしまった方は関節と筋肉の不調和が起きています。
歯を失ってしまった方も顎関節と咀嚼筋に不調和が生じています。
世界一の義足製作技士(義肢装具士)が作った義足なら、着けてすぐに歩けるように、走れるようになるでしょうか?
義足の場合
・リハビリにより股関節の柔らかさと可動域の回復が必須です。
・歩くための筋力の回復が必要です。
義足を装着して日常生活を送るためには、まず最初にリハビリテーションが必要なことはどなたもご存知で理解ができます。しかし入れ歯の場合は新しい入れ歯を入れてすぐ食べられるような気がしてしまいます。現実は義足と同じように調整やリハビリが必要です。
仮歯のリハビリテーションとはどんなもの?
顎関節の可動域の回復と咀嚼筋(ソシャク筋)の筋力の回復なしにはしっかり噛むことはできません。まずは、食事はやわらかいものから始め、調整が必要です。
義足も精密に型を採りますが、当たって痛くはならないのでしょうか?
着けただけでも痛いこともあるでしょうが、歩けばもっと痛むこともあるでしょう。走れば、さらに痛むと思います。歩く、少し早く歩く、小走り、走る、動きのレベルが上がるほど当たる頻度が増しますが、それは、走ることができた裏返しの痛みです。調整を重ねれば痛みも消失するでしょう。
入れ歯も同じです。
最初から最高の義足が必要でしょうか?
リハビリテーション中は、股関節、脚の筋肉の回復具合に合わせて義足の断面や様々な部分を削ったり足したりして調整します。調整が終わった義足はつぎはぎだらけかも知れません。しかししっかり歩けるようになったその義足を参考にして最終的な義足を作り直しすれば、機能的に優れたつぎはぎのない綺麗な義足が出来上がると思います。
入れ歯も同じです。
リハビリテーションの概要
特に、しばらくしっかり噛むことができなくて軟らかいものばかりをを召し上がってきた方は、仮歯でのリハビリテーションが必要です。
1.ご自身のお口の中は以前のように正常に機能してはいないことを知って頂く。
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2.仮歯(リハビリ用の治療義歯)を使って顎関節、咀嚼筋、それらの調和の回復を図る。と同時に理想的な前歯による審美性を探る
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3.しっかり食べられることを確認すると同時に満足のいく審美性を確認する。
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4.回復した状態を元に(筋肉と調和した形としっかり食べられる噛み合わせ)最終的な入れ歯を作る。
まとめ
「最高に良い入れ歯を歯医者に作ってもらえさえすれば、痛くなく良く食べることができるようになる」という風潮が世の中にはありますが、真実はそうではありません。歯科医がはっきり言ってこなかった責任でもあり、歯科医自身がそう思っている方もいるようです。
いきなり本入れ歯を作るということは、回復していない顎関節、咀嚼筋の動きに合わせた入れ歯をつくるということです(これは審美性にも影響します)。それでは、高いレベルでしっかり噛めるようにはなりません。
これが、高いお金を出して、何度も入れ歯を作る原因です。何度も入れ歯を作り直さないための秘訣は、仮歯(リハビリ治療義歯)でお口の機能を回復させて、噛める事を確認して頂いてから最終的な入れ歯を作る。
遠回りするようですが、これが、実は一番の近道です。
是非、仮歯(治療義歯)の重要性を理解してください!
※この記事の内容は全ての方に当てはまるものではありません、是非カウンセリングをお受け下さい。