シニア世代は加齢とともにゆっくりとした動作になっていきます。
“からだが若い頃のように思うように動かなくなったなぁ”と思うことはありませんか?
年齢を重ねれば、筋力が衰え、うまく筋肉を協調して動かすことが出来なくなるのは当然ですよね。
それと同じように、上手に食べて上手に飲み込むことができなくなることが増えていきます。
それは摂食・嚥下障害と言われ、加齢によりお口やのど周囲の筋肉が衰えてきたり、病気の後遺症などの障害が出ることで機能が低下することによりおこります。
若い頃には想像もできなかったことで、誰にでもその危険性はあります。
では実際どんな症状かと言いますと、
よくむせる。
むせの勢いが弱くなってくる。
食事をしている間、よくせき込む。
飲み込むタイミングがつかめない。
口のなかに食べ物をため込んでしまう。
食べ物がのどに詰まる。
食後にかすれ声になる。
飲み込むときに痛む事がある。
食べこぼすことが多い。
唾液が出なくなる。
食べることに集中できない。
などです。ご本人とって食事が楽しくなくなってしまうこともよくあることです。
老化によるところが大きいとお話しましたが、老化により食べ物の通路に問題が起きたり、噛む筋肉が萎縮したり、嚥下反射や咳反射が衰えるからです。
嚥下反射とは、
お口の中で粉砕した食べ物が食道へ送り込まれるときに、無意識に上手に飲み込む働きのことです。
せき反射とは、嚥下反射のタイミングが合わない時、
気管に粉砕した食べ物が落ちそうになった時に、
咳き込んで気管に入らないようにする無意識の働きをいいます。
また、脳卒中や癌の手術の後遺症や認知症も大きな原因です。
脳卒中などで脳の運動機能や感覚機能に障害が起こると、
唇の動きと舌の動きにスムーズな連動性が出ないために食べ物をこぼしたり、むせたりします。
摂食・嚥下障害は、ただむせてしまうだけではなく、本当は怖い症状なのです。
本来は食道に入り消化の道を行くはずの食べ物や、口腔内の常在菌や歯周病菌が唾液に混じって気道に入ると肺炎の一種である、誤嚥性肺炎を起こします。
肺炎は怖い病気で、日本人の死因の第4位で、60歳以上のシニアが90%を占めます。
その中でも多いのが誤嚥性肺炎で、死後解剖された肺からは、
先ほどの
口腔常在菌や
歯周病菌が
多数検出されます。
また摂食嚥下障害により食事の量が減ると体を健康に維持するのに必要な栄養が不足してしまい、栄養不足による急激な老化の進行がおこる可能性もあります。
そうなると免疫力も低下して感染症にかかり易くなり思わぬ病に襲われたりもします。
また、摂食・嚥下障害により、水分の補給量が減ると脱水症状を起こすことがあります。
他には、上手に飲み込めないので、食べ物が気道を塞いでしまう事故も起きやすく、呼吸困難により窒息をひきおこすことも考えられます。
脱水も窒息も致命傷になりますので十分な注意が必要です。
最後に、摂食・嚥下障害の予防、留意点をお話しようと思います。
•摂食・嚥下障害を引き起こす脳卒中などの全身疾患の予防としての生活習慣病対策をしっかりする。
•口腔体操(顔面筋、口唇、舌の運動)や顔面マッサージ、首や肩の体操も積極的に日常に取り入れる。
•専門的な口腔ケアを歯科医院で定期的に受けましょう。
虫歯があったり、コントロールされていない歯周病があるとそこは細菌の巣になり菌の数も増えます。
また、きちんと噛めるような状態を整えることが大切です。
歯が欠損している所をそのままに放置したり、合わない入れ歯や噛めない入れ歯を使っていると悪い影響を与えます。
必ず専門医の受診が必要です。
•家庭での口腔ケアにも力を入れましょう。
歯ブラシで歯を上手に磨けない方は電動歯ブラシのご使用をお勧め致します。
大切なのは、口腔内の絶対的な菌数を減らすことです。
•食事姿勢に気を付けましょう。不良姿勢は誤嚥のもとです。
•嚥下しにくい食べ物、状態を把握し、注意工夫する。
個体と液体が混じったもの(サラサラの雑炊や、具入りスープなど)
噛み切りにくいもの(こんにゃく、筋肉、いか、たこなど)
繊維質なもの(ごぼうやパイナップルなど)
ぼそぼそするもの(クッキー、粉もの、など)
張り付くもの(のり、薄切りきゅうりなど)
熱いもの、辛いもの
•食べる順番にも気を付ける。
食べ始めはまだ動きが良くないので、
また食事後半は疲れがでてくるので、共に嚥下しやすい食べ物を持ってくる。
シニア世代は食事の量はあまり必要としませんが、おいしいもの、好物なものを少しでも頂くことは、大きな楽しみの一つです。それゆえに、口腔機能の維持はその楽しみを
享受するためには欠かせないものです。口腔内の小さなケアから始めましょう。
御参考になれば幸いです。
摂食・嚥下障害でお悩みなら佐野入れ歯専門外来へご相談ください。
当院は栃木県内で数少ない入れ歯専門クリニックです。