入れ歯デンタルクリニックの飯田です。
今回は特に入れ歯に関して、理想論や建前ではなく、歯科業界の現状と本音をお話しします。
入れ歯は誰が作っているのか?
たまにですが、入れ歯は歯科医師が、歯科医院内で作っていると思っていらっしゃる方がいます。
入れ歯は、歯科技工士と呼ばれる方々が歯科技工所というところで作っているのが一般的です。
以前は、歯科医院内技工所(院内ラボ)と呼ばれる歯科医院の一室に、この歯科技工士さんが詰めていて、そこで入れ歯を作ったり修理したり、その他の被せものなどを作っていました。
現在は歯科医院から独立した場所に技工所(ラボ)を作って歯科医院からの注文を受けて作るパターンの方が多くなりました。
この歯科技工士は、2年間、専門学校に通い知識と技術を習得し、その後、国家試験を受け合格すると資格が与えられます。
学校を出てすぐ技工所が開設できる程、技術者の世界は甘くなく、何年も修行をして技工所(ラボ)を開設します。
また、高いレベルの仕事をしようと思えば高額な機材が必要になり、一台何百万もする機材もあり、多額の借入で技工所を開設するのが普通です。
保険の入れ歯と保険外の入れ歯の出来の違いの根本的な理由
保険の入れ歯は流れ作業で作られている
実は、保険の入れ歯の料金は国で決められていて、皆さんが思われるよりずっと低いのです。
よって、人件費や利益を出すには、無駄な材料や時間を使わずに、効率よく製作しなければなりません。
お分かりのように、モノを一番効率よく製作する方法は、工場で行われている流れ作業です。
ひとりの人間(機械)がある部分だけを担当し、次々と組み立てていく方法です。
テレビや車でしたら、精巧に作られた部品を順番に組み立てて行けば、大量に良い商品が出来上がりますが、
お口の中は十人十色です。
それを工場のような流れ作業で作っていけばどうなるか想像がつきますよね。
入れ歯は単なるモノではありませんので、ひとつひとつに個性があり微調整も必要です。
テレビのように画一的な規格があるわけでもありません。
一般に保険診療では、入れ歯を着ける方の個性や特徴が技工士側に伝わることは殆どなく、伝えられても、流れ作業ではその個性を入れ歯に表現する時間が与えられていないのが現状です。
どれも同じように脱個性的に機械作業のように作っていくことも、”流れ作業” の一種であり、これが保険の入れ歯製作の現場では行われているのが現状なのです。
想像してみて下さい!
目の前に10人分の入れ歯の型があり、
それをできる限り短時間で、仕上げまで効率よくスピーディに終わさなければいけない場面を。
一つ一つ個性を加味して、一工程一工程じっくりやっていけると思いますか?自費治療のように!(もちろん、本来はそうしなければいけないのですが。)
出来上がってきた入れ歯に対して歯科医師は、もっと個性を出して細部まできれいに仕上げ、しっかり噛めるように作ってください、と言うこともできますが、
歯科技工士も、歯科医師もお互いの与えられた保険診療という条件の中で入れ歯製作をおこなっているという意識があり、ある一定のレベルをクリアーしていればそれ以上を入れ歯に求めることはありません。
残念ですが、現状では保険の入れ歯を作るということは、薄利多売の世界で、数を多くやらないと利益にならないということなのです。
問題点は一点、保険の入れ歯の費用・料金なのです。
患者さんの立場に立てば、入れ歯の費用は安いに越したことはありません。
保険での入れ歯治療の費用は、とても助かります。
歯科技工士としてしも、良い入れ歯を安い費用で使ってもらいたいと思うのが人情です。
(ましてや対象は年配の方も多いわけですから)
しかしそれを実際に、自費治療の入れ歯のように時間と労力をかけ、突き詰めてしまうと、自分の技工所が潰れてしまうのです。
私も歯科医師になる前は10年も歯科技工士をしていましたので歯科技工士の立場と本当の気持ちは痛いほど良く分かります。
歯科技工士に成りたくて成ったわけですから、噛めなくて困っている患者さんを助けたい、良い入れ歯を入れて差し上げたい、そしてあなたの健康に少しでも寄与したい、という気持ちは歯科技工士なら誰もが持っているものです。
しかし、その気持ちを追求すると技工所の経営が成り立たない。
きれいごとで良ければ、いくらでも理想論ばかりを話せます。
しかし、本当にあなたのためを思って満足していただける入れ歯を作ることが一番大切だと思っている歯科技工士さんは、辛い選択を日々余儀なくさせられているのです。
実は歯科医師にも同様なことが起きています。
次回お話させていただきますね。
2018.7.8 更新
入れ歯デンタルクリニック 院長 飯田