入れ歯とインプラントどちらにしようかお悩みになっている方に、“どう考えたら自分にとって良い選択ができるか!?選択するときの考え方を入れ歯専門歯科医師の立場からアドバイスをさせていただきます。これは一つの考え方ですが、必ずお役に立つと思います、参考にしてください。
インプラントとはどういうもの?
簡単に説明致します。歯が抜けたところに手術にて局部麻酔をして、歯ぐき・歯槽骨に太いネジを埋め込みその上に人工歯を接続して口腔機能の回復を目指す治療です。
長所
・完璧に成功すれば、歯のないところに歯を作る歯科治療の中では一番違和感がなく良く噛むことができます。
短所
・骨の状態や持病によってはできない方がいます
・小さいですが手術なので人によっては精神的に受け入れられない方がいます
・歯ぎしり、歯列接触癖がある方は予後が悪い
・術者の技術に差が出る
・高額です
入れ歯とはどういうもの?
歯のないところに、取り外しが可能な床という部分の上に人工歯をつけたものを製作し装着することにより口腔機能の回復を目指す治療です。
長所
・完璧に成功すれば満足度は高い
・ほぼ全ての方がどんな状態であれ受けることが可能な治療です
・からだに侵襲がほとんどなく優しい治療です
・顔貌の回復がし易い
短所
・インプラントと比べると違和感が大きい
・インプラントと比べると噛む力は弱い
・術者の技術の差が大きい
インプラントか入れ歯、どちらにするかの選び方
結論から言いますと、選ぶ基準はあなたの優先順位です。もっと言いますと何が一番大切ですか?ということです。患者様お一人お一人その優先順位は違います。下記に患者様が迷う項目またはどちらかに分ける項目を列挙します。ご自身のお気持ちを整理してみてください。
何が一番大切か?反対に何が一番受け入れられないか?
何が一番大切か!?ご自身の一番を決めることは難しいかもしれません。優先順位一番が複数ある方は多いですから。その時はどうしても受け入れられないことを先に考えると良いでしょう。受け入れられないことはすぐ浮かぶのが人の常です。
以下の条件で判断するときは、どちらもレベルの高い入れ歯、レベルの高いインプラントを想定してお話ししています。
・なんでも噛めること
順位をつけるなら、インプラントの方が硬いものなど咀嚼力は上です。
・審美性(見た目の美しさ)
審美性は強いて言うなら入れ歯の方が自由度が高いです。インプラントは歯が立つ付近のボリュームしか回復できませんが、入れ歯は広い範囲のボーリュームを回復することができます。
・違和感(気持ち悪さ)
違和感はインプラントの方が少ないです。レベルの高い入れ歯であってもインプラントの違和感の少なさには勝てません。レベルの高いインプラントなら天然歯とさほど変わりはないでしょう。
・発音
発音も違和感と同様です。
・からだへの侵襲(身体または精神に傷害または負担が生じること)
持病がある方はかかりつけ医との相談が必要です。特に骨粗鬆症を患っている方は注意が必要です。
・手術そのものを受け入れられるか?
この項目は重要で、多くの方がこれで決まります。身体は手術に耐えられる方でも、精神的に耐えられない方が多く、とにかく怖いと訴えられます。精神的なストレスは無視できない大問題です。
・治療後のメインテナンス
歯周病が定期的なお掃除と呼ばれる治療が必要なように、インプラントにもインプラント周囲炎というのがあり、定期的なお掃除が必要です。入れ歯は慣習的には定期的なメインテナンスを必要とおっしゃる歯科医もいますが私はその意見に懐疑的です。
調子が良い入れ歯欲を出して調整するとかえって微妙なバランスを壊してしまいます。メインテナンスは日常のお掃除をしっかりやっていただければ大丈夫です。不具合は問題が発生した時に解決できます。
・治療費
治療費はインプラントの方が高く、その差は入れ歯は何分の1かもしれません。
結論
先に入れ歯治療をお受けになることをお勧めします。私は入れ歯を専門としている歯科医ですので、私のところにいらっしゃる患者様の中には、インプラント治療で嫌な思いや失敗なさった方が一定数いらっしゃいます(インプラントで成功した方はいらっしゃらないので当然ですが、、)。
インプラント治療がうまく行かなかった場合、お口の中の歯ぐきを支えている歯槽骨の減少は著しく、その後入れ歯治療時には入れ歯の維持安定に関しては何症例となってしまうケースをお見受けします。お身体への侵襲、治療費、精神面を考えた時に、技術の高い入れ歯の専門歯科で入れ歯治療をお受けになって、それでも満足できなかった時には最終治療としてインプラント治療をお受けになるという順番がよろしいのではないかと思います。